2012.04.24 Tuesday 21:18

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(13)

 公開後に管理制度の中身を充実させていくための方策とはどのようなものでしょうか。

1つは、至極当然のことですが、公開の目的を再確認することです。

株式を公開する直接の目的は、知名度の向上や資金調達、人材確保などでしょう。
しかしながら、直接の目的が何であれ、目指すところは会社の持続的発展のはずです。
つまり、公開は「プロセス」であって「ゴール」ではありません。
このことを忘れて、「株式公開という目的は果たした。あとは、最低限必要な外向けのポーズさえとっておけばOK。」などという姿勢でいると、管理制度自体は単なる重荷になってしまいます。

最終目的は会社がさらに発展することであって、公開はそのための一過程。
このことは、決して忘れないようにしましょう。

2012.04.10 Tuesday 21:16

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(12)

 前回まで、株式公開してよかったと思っている会社も、内部管理制度の整備には苦労しているという事例を見てきましたが、これらの会社には共通点のあることがわかります。
それは、準備段階から真剣に内部管理制度の中身をつくりこんでおり、公開後もそれが機能していることです。

ただし、通常株式公開には目標時期があり、リミットが決まっている以上ある程度「形優先」にならざるを得ない部分もあります。
そのような場合、公開後も制度の中身を充実させる方策をあらかじめ考えておく必要があります。

よくある誤解が、いったん内部管理制度の形を整えさえすれば、あとは勝手に回っていくだろう、ということです。
しかしながら、株式公開を果たし、「公開」という錦の御旗がなくなった状態で、制度の中身を充実させていくことは大きな苦労を伴います。
このことを十分に踏まえて、公開後に制度の中身を充実させる方策を練っておかなければなりません。

2012.03.12 Monday 22:01

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(11)

 今回は、前回に引き続き、株式公開を後悔していないと思われる会社の、内部管理制度整備の苦労事例を見ていきましょう。

<事例3>規程の周知・運用で苦労の例(JASDAQ、小売業)
『当社の場合、最も苦労したのは、規程整備。それまでは就業規則しかなかった。規程は、組織、人事、業務、厚生などに大きく分かれる。当社の場合、業務規程だけでも仕入、販売、在庫に係る規程がそれぞれ必要であり、全部で40個くらい作った。
当社は、銀行系のコンサルタント会社を上場準備スタートと同時に入れており、「すべての準備が初めて」という社内体制であったので非常に有効に機能した。とにかく新しいことばかりでわからないことだらけ、わからなくなったら即教えてくれるしっかりした信頼のおける外部支援者に聞ける体制を持つこと。コンサルタントには規程類や「兇良堯廚料念討鮟颪い討發蕕ぁ会社の実情をよく知っているプロパー社員が、会社内用に沿って修正、肉付けをしていった。上場準備スタートが上場の6年前と比較的早くから準備を始め、内部管理体制の基礎作りができていたこともあり、審査は順調であった。』

<事例4>人材で苦労(JASDAQ、製造業)
『公開準備に10年以上かけたが、当時新聞や人材派遣会社から雇用した人材は、当該企業文化を理解し、成長させていく能力に欠けていたため、上場準備期間中に解雇せざるを得なかった。高い報酬を払っても企業人として情熱を持って企業文化を理解し、企業を成長させていく人材であればよいのだが、簡単にそういう人材を得るのは難しい。
知人からの紹介で、監査役と内部監査の人材を得たことにより、権限と責任が明確化され、ルールにしたがって動く企業になっていった。』

2012.03.05 Monday 22:13

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(10)

株式公開を後悔している会社もしていない会社も内部管理制度整備には苦労していることがわかりましたが、後悔していない会社は後悔している会社と比べてどのような点が違うのでしょうか。
今回は、後悔していないと思われる会社の事例を見ていきたいと思います。

<事例1>予算管理で苦労の例(JASDAQ、サービス業)
『上場準備に入るまでは予算と実績の整合性などは気にしなくてもよかった。業績さえ伸びていれば全く問題がなかったところへ、予算計画を立て、実績が計画より上回っても下回ってもだめという上場会社に必要な業績予想とその開示の的確性を求められることになった。老舗企業であるがゆえに、全社的に新しい業績管理の考え方への移行やシステム導入には骨が折れた。
結局、上場申請期もほぼ12ヶ月予実管理状況をチェックされ、いわゆる期越えの上場となった。
当社の対応としては、事業を顧客との契約期間別に「長期」と「スポット」のセグメントに分け、ぶれの少ない長期契約を中心に予算を計画、ぶれの少ない予実管理を実現している。』
 
<事例2>原価計算で苦労の例(JASDAQ,製造業)
『一言で言うと、オーナー経営からの脱皮に苦労した。具体的には、原価計算システムの整備、会計基準を現金主義から発生主義へ、会社借入金に対する社長の保証、職務権限の見直し、規程作りなど、当社は、業暦が長く(50年超)、長年行ってきた当社独自の業務の進め方が隅々にまで浸透しており、その分だけ、社内制度の改変、運用に苦労した。
この内部管理制度整備が不十分と主幹事証券会社から判断され、上場を1年延期した。特に、原価計算システムの整備に時間を要している。
当社は、結果的に上場延期になったものの、すべてプロパー社員で上場準備を対応してきており、時間をかけて整備した分だけ社内にしっかり浸透した。』

2012.02.27 Monday 21:20

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(9)

 前回まで、株式公開を後悔している会社は、内部管理制度がしっかりと根付いていない可能性が高いことを見てきました。

それでは、株式公開してよかったと思っている会社では、内部管理制度は容易に根付いているのでしょうか。

『中小・ベンチャー企業と新規株式公開に関する調査研究』では、株式公開を後悔している・いないにかかわらず、「上場準備で最も苦労した点は?」という質問に対して、次のような結果が出ています。

・内部管理制度の整備(40%)
・人材(準備要員)の確保(25%)
・売上・利益の確保(26%)
・資本政策、市場選定 他

ここからわかることは、株式公開を後悔している・いないにかかわらず、内部管理制度の整備には苦労しているということです。

そして、内部管理制度整備の苦労内容として、各社以下のような事項をあげています。
・組織整備
・利益管理
・兇良作成
・規程の整備
・規程類が何もなく、運用定着に時間がかかった
・労務管理
・統制のため、ルールと実践
・新規部署の設立
・システム構築、原価管理、予算統制etc.
・原価計算
・予実管理
・規程等の整備
・監査法人や証券会社のリクエストが売上規模の割に負担が重かった
・規律、マニュアルの作成
・組織体制の整備
・企業規模の大小にかかわらず同様の制度が要求され、負担大
・組織整備
・社内コンセンサス及び運用の徹底

2012.02.20 Monday 20:59

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(8)

 今日は、株式公開を果たした会社の内部管理制度の実態をのぞいてみましょう。
守秘義務上あまり詳しくお話しすることはできませんが、以下はいずれも実例です。

予算制度
管理部門が数字だけ作成。経営者は「わしが予算じゃ」と、予算制度を無視。
⇒ いつまでたっても行き当たりばったりの業績管理。業績目標は未達続き。

原価計算
かろうじて表計算ソフトで行っていた製品別原価計算を取りやめ。
⇒ 感覚的なコスト管理。コスト削減できず。

与信管理
担当者退職で取りやめ。
⇒ 貸し倒れは「アンラッキー」で済ます。

内部監査
管理部長が兼任。
⇒ 管理体制へのチェックかからず。

取締役会
実際には行わず、議事録のみ作成。
⇒ オーナー経営者の意思決定にチェックかからず。

監査役
普段は従業員同様に担当業務あり。
⇒ 取締役の業務にチェックかからず。

2012.02.13 Monday 22:28

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(7)

ここまで、株式公開を「後悔」している理由として最も多い、業績達成のプレッシャー、管理コスト・事務量の増大、制約の多さについてみてきましたが、ここで改めて株式公開の意味について考えてみましょう。

会社が株式を公開するということは、投資家の立場から見ると、安心して投資できる会社になるということ。
安心して投資できる会社とは、ルールを守って、しっかりとした経営管理を行い、安定的に業績を上げることのできる会社です。
そして、そのような会社になるために、内部管理制度を整備するわけです。

実は、これら安心して投資できる会社の特長は、株式公開の「後悔」理由として最も多い3点と表裏一体です。
すなわち、安定的に業績をあげる体制ができていれば、業績達成のプレッシャーは軽減されているはず。
しっかりした経営管理を行うためには、コスト増・事務量増大は当然です。
ルールを守る意識が根付いていれば、制約の多さは受け止められます。

とすると、株式公開を「後悔」している会社は、内部管理制度がしっかり根付いていないということがいえるのではないでしょうか。


2012.02.07 Tuesday 05:48

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(6)

今日は、株式公開を後悔している会社の「後悔」理由で特に多いものの3つ目、制約の多さについて考えてみましょう。

上場会社には、有価証券報告書の作成や四半期開示など、上場していなければ必要のない事務作業がたくさんあります。

一方、それとは別に、上場するにあたっては、会社法に基づいた株主総会や取締役会などの会議体運営、労働基準法に基づいた労務管理など、上場しているしていないにかかわらず法令によって定められている事項を改めて見直しますが、その多くは実質的には上場時に初めて整備します。

前者と後者を区別することなく一気に整備するため、「制約が多い」という思いがより強くなるのかもしれません。

2012.01.24 Tuesday 08:01

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(5)

今日は、株式公開を後悔している会社の「後悔」理由で特に多いもののうち、管理コスト・事務量の増大について見ていきましょう。

上場維持のためにかかる費用は、少なく見積もっても年間数千万円です。
・証券取引所登録管理料
・会計監査・内部統制監査費用
・株式事務代行費用
・有価証券報告書印刷費用
・管理部門人件費
・システム維持費用 等

このうち、特に注意しなければならないのが管理部門人件費です。
ディスクロージャー等の体制固めの管理部門人材は容易に定着しないことが多く、採用活動のたびに求人広告や人材紹介のための費用が発生します。

2012.01.17 Tuesday 07:53

株式公開を後悔しないために〜公開後の活用を見据えた管理制度の構築〜(4)

株式公開を後悔している会社の「後悔」理由で特に多いのは、業績達成のプレッシャー、管理コスト・事務量の増大、制約の多さの3点だと言えそうです。

今日からは、これらをもう少し掘り下げて見ていきましょう。

まずは、業績達成のプレッシャーについて。

ほとんどの会社は業績予想を開示していますが、実際の業績がこれと大きく乖離することが明らかになった場合(売上高で±10%、利益で±30%など。)、修正予想を開示しなければなりません。
業績予想は、ある意味投資家への「約束」であるため、このような誠実な態度が求められるわけです。

通常、上場準備をしているときは比較的業績好調なため、業績予想の開示ことまで深く考えることはありませんが、当然のことながらそのようなよい状態がいつまでも続くわけではありません。しかも、上場維持のための固定費は、想像以上に利益水準を圧迫します。
そのため、上場後の業績達成へのプレッシャーは思っていた以上のものになるのです。

もちろん、業績が予想通りにならないことはありますが、あまり修正予想を繰り返してばかりいると、市場の信頼を失ってしまうことは言うまでもありません。

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